リハビリテーション医学とは

リハビリテーション科医師は、病気や外傷の結果生じる障害を医学的に診断治療し、機能回復と社会復帰を総合的に提供することを専門とする医師です。

  • 多面的アプローチ(臓器レベルでの機能改善、ADLの向上、住環境整備、社会適応援助など)により、健康寿命の延伸に重要な役割を果たす
  • 急性期から生活期まで幅広いリハビリテーション医学・医療の質向上と標準化(標準的医療としての確立)による社会への貢献

日本リハビリテーション医学会ホームページより)

簡単に言い換えると、

  • 患者さんが退院後に、安全で幸せな生活を送れるようにする
  • 臓器や疾患別の枠にとらわれない障害の治療を専門とし、人間としての活動や生活を扱う
と言えます。

急性期・回復期・在宅全てに関わる


リハビリテーション医学の特徴は、急性期・回復期・在宅全てのフェイズに関わることです。

急性期病棟での仕事内容

急性期リハ医の仕事は、内科外科の医師・看護師とリハビリスタッフ・ソーシャルワーカーの連携を促進し、患者のADL・退院における問題を解決することです。

急性期病棟の医師・看護師は病気の検査や治療に特化しているためADL・退院における問題に不慣れなことが多いです。

一方でリハビリスタッフ・ソーシャルワーカーはADLや退院に詳しいですが病気の知識が不十分なことが多いです。

お互いの専門分野が異なるため意思疎通が進まず、患者のADL・退院における問題が解決されないこともあります。

そこで病気・ADL・退院について知識と経験を持つリハ医が間に入ると、医師・看護師・リハビリスタッフ・ソーシャルワーカーの間でスムーズな意思疎通が可能となり問題解決につながります。

いわば医療語とリハビリ語の通訳を行うわけです。

また、医療が高度化した現在では、主治医が自分の専門外の問題に対応するのは大変です。ましてや患者の問題を1人ですべて解決するなど現実的ではありません。様々な分野の医療知識・リハビリ知識をもつリハ医がサポートに入ることで、主治医は本来の業務に集中することができ、患者により良い医療を提供できるようになります。

このように、急性期病棟という組織の中でリハ医が果たす役割は地味ながらも大きなものです。

<主な対象疾患>

回復期病棟での仕事内容

特定の疾患により障害を持った亜急性期の患者さんが自宅退院・社会復帰を目指し30〜180日を目処にリハビリ入院した際に、主治医としてその患者さんの病棟管理を行います。

新しく障害を抱えた患者さんが自宅退院・社会復帰するために機能回復と環境調整の両方への介入を行います。
そこで監督のような役割を果たすのがリハ医です。

例えば片麻痺を患った方を例にすると、全身状態の安定、麻痺の改善訓練、麻痺が残っても目的の行為ができるようにする訓練、行為を行いやすくする装具の処方、生活環境の調整、支援者への情報提供と支援指導、利用可能な社会制度の案内、退院後の有訴時対応の調整…様々な視点からのアプローチを看護師・療法士・医療ソーシャルワーカーなどと協力して行います。

機能回復と社会復帰を現場で行うのは療法士や医療ソーシャルワーカーなどですが、そこで医師が果たす役割は各専門職に精通し、チームを主導することで、チームパフォーマンスを向上させる事です。

入院してくる患者さんの主な疾患は脳血管疾患、脊髄損傷、骨折、切断、廃用症候群などですが、入院中に起こる合併症の管理はリハ医が行います。

具体的には以下のような症候・疾患の管理です。

リハビリテーション科に入ると、医師としての能力が身につかないのでは?という不安の声も聞きますが、実際の医療現場では幅広い疾患の管理が求められます。

もちろん、脳卒中再発、急性心不全、急性冠症候群、肺塞栓、肺胞出血、消化管出血、イレウス、敗血症、婦人科対応など、他科の先生方との連携によって管理する疾患もあります。

 

専門医試験も、幅広い内容から出題されます。